先にご紹介した3つのドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カパ)には、それぞれ5つのサブドーシャがあり、全部で15種類あります。
不調の原因を調べるときに、サブドーシャを知っていると、さらに詳しい体の状態が分かります。
サブドーシャは、人間の体の中で、それぞれ対応する場があり、その場のバランスが乱れると、心身に不調が出やすいと言われています。
3つのドーシャそれぞれに、心臓に位置するサブドーシャ(プラーナ・ヴァータ、サーダカ・ピッタ、アヴァランヴァカ・カパ)があります。
心臓は、心と体の活動拠点となる重要な場です。
一般的には、3つのドーシャを把握していれば十分だと言われていますが、アーユルヴェーダを仕事にされる方は、サブドーシャについても学んだほうが良いでしょう。
目次
ヴァータ
ヴァータは、神経系を通じて全身に位置する。ヴァータの5つのサブドーシャは、「身体の中に吹く風」とも呼ばれ、神経系を通じて、体の内部の動きと深く関連している。
プラーナ・ヴァータ
(場所)
脳、頭、胸・心臓
(乱れると)
不安、心配、杞憂(考えすぎ)、不眠症、神経障害、しゃっくり、喘息などの呼吸器の病気、緊張性頭痛など。
プラーナ・ヴァータは、他の4つのヴァータ・サブドーシャを統括する重要なサブドーシャ。
ヴァータは全身に深く影響しているドーシャなので、プラーナ・ヴァータもまた、すべてのサブドーシャの中で最も重要な役割を果たしている。
五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)や、思考力、推測力、感情、呼吸や嚥下を司っている。
ウダーナ・ヴァータ
(場所)
喉、肺
(乱れると)
言語障害、空咳、咽頭痛、扁桃炎、耳の痛み、全身の疲労など。
ウダーナ・ヴァータは、言語機能、思考、記憶を司る。
サマーナ・ヴァータ
(場所)
胃、腸
(乱れると)
消化不良、ガス、下痢、胃の痛みなど。
サマーナ・ヴァータは、胃から腸に食べ物を運ぶ機能や、蠕動を司る。
アパーナ・ヴァータ
(場所)
結腸、下腹部
(乱れると)
便秘、下痢、腸痙攣、大腸炎、胃腸障害、生理不順、前立腺肥大、性機能障害、筋痙攣を伴う腰痛など。
アパーナ・ヴァータは、老廃物の除去、性機能と月経を司る。結腸は、ヴァータの座でもあるので、ヴァータの不調は、この場所から現れやすい。
ヴャーナ・ヴァータ
(場所)
神経系、皮膚、循環系を通して全身にある。
(乱れると)
高血圧、血行不良、不整脈、ストレスによる神経障害など。
ヴャーナ・ヴァータは、主に循環を司っている。特に心臓の鼓動、血管の拡張と縮小、抹消の循環。その他に、血圧の調整や発汗、あくび、触感も司る。
ピッタ
ピッタは代謝を司り、体の熱や消化の機能を持つ。また視覚は、ピッタと関連する主要な感覚である。
パーチャカ・ピッタ
(場所)
胃、小腸
(乱れると)
胸やけ、胃酸、潰瘍、消化の不規則(消化力不足、消化力の過剰)など。
パーチャカ・ピッタは、食物の消化や、栄養の吸収を司っている。
ランジャカ・ピッタ
(場所)
赤血球、肝臓、すい臓
(乱れると)
黄疸、貧血、血液障害、皮膚の炎症、怒り、敵意など。
ランジャカ・ピッタは、赤血球の生成や、血液成分の調整、血管からの栄養の供給などを司る。
体内に滞る毒素は、ランジャカ・ピッタを通して、ピッタの不調の原因と考えられている。
サーダカ・ピッタ
(場所)
心臓
(乱れると)
心臓疾患、記憶喪失、情緒障害(寂しさ、怒り、心痛)、優柔不断など。
サーダカ・ピッタは、心臓の機能の他に、記憶力や、心理的な満足感なども司る。
アーローチャカ・ピッタ
(場所)
目
(乱れると)
目の充血、視覚障害、眼病。
アーローチャカ・ピッタは、視力や、心の窓としての目を司る。目と感情がリンクしている。カッとなって、怒りで周囲が見えなくなったり、目つきが怒っていたりすると、アーローチャカ・ピッタは乱れている。
ブラージャカ・ピッタ
(場所)
皮膚
(乱れると)
発疹、ニキビ、腫れ、皮膚がん、皮膚病。
ブラージャカ・ピッタは、皮膚と感情がリンクしている。ストレスを受けると、肌が荒れたり、ニキビが出来たりする。
カパ
カパの主な性質は、構造と湿気。味覚、聴覚も司る。カパのバランスの乱れは通常、胸から始まり頭へと広がっていく。
クレーダカ・カパ
(場所)
胃
(乱れると)
消化障害(消化の遅れ、胃もたれなど)。
クレーダカ・カパは、胃壁を常に潤った状態に保つ。カパの乱れは、このクレーダカ・カパの胃に最初に現れやすい。
アヴァランヴァカ・カパ
(場所)
心臓、胸、腰
(乱れると)
胸部うっ血、喘鳴、喘息、うっ血性心不全、呼吸障害、無気力、腰痛など。
心臓はカパの座でもある。アヴァランヴァカ・カパは、胸、肺、背中を強靭に保つ。カパのスタミナはこのサブドーシャにある。
ボーダカ・カパ
(場所)
舌
(乱れると)
味蕾障害、唾液腺障害など。
カパの人が、食べすぎや頻繁な食事をすると、味覚が鈍り、過食症になる恐れがある。偏食(味の偏り)は、肥満、食物アレルギー、粘膜のうっ血、糖尿病などのカパの病気の発症率が高くなる恐れがある。
タルパカ・カパ
(場所)
鼻腔、頭、脳脊髄液
(乱れると)
鼻づまり、花粉症、鼻かぜに伴う頭痛、臭覚障害、感覚鈍化など。
タルパカ・カパのバランスが乱れてくると、流れがつまったり、逆に流れ過ぎてしまったりする。鼻がつまったり鼻水が流れたりするのは典型的なカパの鼻の異常。
シュレーシャカ・カパ
(場所)
関節
(乱れると)
関節病
シュレーシャカ・カパは、全身の関節の潤滑さを司る。関節部分のヴァータが過剰になると、関節から潤いが失われてしまい、関節炎となる。ピッタの過剰は、関節が熱くなり、炎症を起こし、関節リューマチの症状が現れる。カパの過剰は、関節を緩ませ、水が溜まる。