アーマとアグニ

以前に、プラクリティとヴィクリティについて書きました。

プラクリティとは、その人が持って生まれた本質です。プラクリティのバランスをとることが、その人が心身ともに健康な状態であるために大切なことです。

反対にヴィクリティとは、過剰という意味を持ちます。バランスを崩し、不調や病気に近い状態です。

プラクリティとヴィクリティ

では、バランスを崩し、過剰になったヴィクリティはどうなるのでしょうか?それを今日は書いてみます。

アーマとは

アーマは未熟という意味を持ち、バランスを崩すことで生じる、未消化物や老廃物のことを指します。

アーマは粘着性があり、体内のスロータス(血管、リンパ管、消化管、尿道、乳腺などの菅、通路)を塞いで詰まらせてしまいます。

そしてこのスロータス(経路)が詰まることが病気や老化の原因となると考えられています。

アーマが蓄積される原因

体内で充分に消化しきれなかった食べ物や過剰なドーシャは、アーマ(未消化物)となり、排出されずに体内に蓄積されていきます。

例えば、ヴァータ体質の人がヴァータを増やす食べ物ばかりを食べたり、ヴァータ的な行いを過剰に行った場合、体内でヴァータが増えすぎ、余ってしまいます。

そして、体内で余った未消化物や、多すぎるドーシャがアーマとなり、蓄積されて毒となり、病気の元となります。

アーマはただ単に食べ物の未消化物というだけではなく、心にも当てはまります。

例えば、ストレスが多い生活をしていると、心にアーマが蓄積されていき、イライラや鬱などの症状の原因となることがあります。

アグニとは

アグニは、火という意味を持ちます。消化と代謝のことです。アーマはきちんと消化が行われていれば発生しないと言われています。

アグニにもバランスがあります。冬は消化が強くなり、夏は弱くなると言われています。

アグニは昼間が最も活性すると言われています。その為、アーユルヴェーダでは、昼食の量を朝食や夕食よりも多くとるように勧めています。

アグニを高めるためには、食事の30分前に生姜の薄切りを食べると良いと言われています。

アグニが弱まると、消化不良になり、アーマが増えます。でもアグニが強すぎても、胃酸が増えすぎたり、下痢という症状が起きたりします。

アグニもバランスがとても大切です。

アーマとアグニまとめ

アーマ(未消化物)を溜めないためには、アグニ(消化)を活性化して、ヴァータ、ピッタ、カパがそれぞれ増えすぎないように、バランスをとることがとても大切です。

 

アーユルヴェーダ的な季節の過ごし方

アーユルヴェーダでは、地、水、火、風、空の5つのエネルギーによって季節の変化が作り出されると考えます。

季節の移り変わりに影響を受け、ヴァータ、ピッタ、カパという3つのドーシャも変化します。

季節の過ごし方

アーユルヴェーダの古典「チャラカ・サンヒター」や、「スシュルタサンヒター」には、「リトゥチャリア」と言う、季節の過ごし方に対するアドバイスが書かれています。

アーユルヴェーダでは、太陽の動きに合わせて、一年を6つに区切ります。それぞれの季節に合った過ごし方や食事をすることにより、健康で長生きが出来ると考えられています。

シシーラ・ルトゥ 厳冬。2月~3月中旬
ヴァサンタ・ルトゥ 春。3月中旬~4月
グリシュマ・ルトゥ 夏。5月~6月
ワルシャ・ルトゥ 雨季。7月~8月
シャラダ・ルトゥ 秋。9月、10月、11月
へーマンタ・ルトゥ 初冬。12月~1月

ドーシャと季節の移り変わり

季節によるドーシャやエネルギーの移り変わりです。それぞれの季節によって、特定のエネルギーが優勢になります。

カパ

カパの季節である春は、地と水の影響を受けます。

冬の間に油分や水分の多いものを食べ過ぎたり、運動不足になるとカパが増えます。

春になると、冬の間に増えたカパが溶け出して、カパの過剰が原因の花粉症などが起こったり、体にだるさや眠気を感じることがあります。

梅雨

梅雨の季節は、水のエネルギーの影響を受け、体がだるくなりがちです。

水のエネルギーが過剰になると、火のエネルギーを消してしまい、消化の力が落ちてしまいます。

春の間に汗をかくくらいの運動をして水のエネルギーを減らしておくと、この時期に体調を崩すのを防ぐことが出来ます。

ピッタ

ピッタの季節である夏は、火と水の影響を受けます。

火のエネルギーで代謝が促進されるので、体力が消耗し疲れやすくなる季節です。

冷房の効きすぎた部屋にいて体を冷やしすぎたり、冷たいものを摂りすぎたりすると、水が増え、消化の火が減り、食欲が落ちてしまう原因となります。

湿疹や下痢、食欲不振や夏バテなどの症状が出やすくなります。

ヴァータ

秋から冬は、風と空の影響を受けます。

秋は、ピッタとヴァータの影響を受けます。

移り変わりやすい風と空の影響を受けて、情緒不安定になることがあります。

気候の変化が原因で、風邪や扁桃腺炎などになりやすいのは、夏にピッタが増えるため。身体を温めて、適度に汗をかくことが大切です。

冬は、空気の冷たさや乾燥というヴァータの影響を受けます。

消化力が高まり食欲が旺盛になりますが、食べすぎるとカパが過剰になり、春先にだるさや眠気、花粉症などの症状が出ますので注意したいところです。

冬はカパが蓄積しやすく、寒さでヴァータが乱れやすくなります。

カパもヴァータも冷たいドーシャなので、反対の温かい食べ物や飲み物を摂るようにします。

アーユルヴェーダ的な一日の過ごし方

アーユルヴェーダでは、1日の時間もドーシャで表すことができます。

あなたの本質がどのドーシャ(ヴァータ・ピッタ・カパ)であったとしても、時間帯によって、その影響を受けるとアーユルヴェーダでは考えます。

ドーシャの特徴

アーユルヴェーダではドーシャは大きく3つに分かれます。それぞれのドーシャの特徴は表の通りです。

バランスが崩れるとは、そのドーシャが増える(過剰になっている)という意味です。

ドーシャ 特徴
ヴァータ 風と空が結びつき、運動の作用を持ちます。風が空間になびき、いろんなものをガサガサと動かすイメージです。

軽い、動く、冷たい、乾燥などの特徴があります。

ドーシャのバランスが取れているときは、直観が鋭くなり、ひらめきが冴え、フットワークが軽くなります。バランスが崩れると不安にとらわれたり、抑鬱症状が出てしまったりします。

ピッタ 火と水が結びつき、変換の作用があります。火に油を注ぐと火が強くなり、水を注ぐと火は消えます。

熱さ、鋭さ、流動性などの特徴があります。

ドーシャのバランスが取れているときは、機転が効き、集中力が高まります。バランスが崩れると、イライラしたり、すぐに怒ったり、批判的になったり、嫉妬深くなったりします。

カパ 地と水が結びつき、形や骨組みを作る作用があります。

重い、冷たい、安定などの特徴があります。

ドーシャのバランスが取れているときは、穏やかさや落ち着きが生まれます。ドーシャのバランスが崩れると、怠惰で鈍感、頑固になってしまうことがあります。

アーユルヴェーダの五元素について
ドーシャタイプ診断

ドーシャと時間

時間帯によって受ける影響とは、その時間帯を支配しているドーシャの影響を強く受けやすい(支配しているドーシャが増えやすい)という意味です。

例えば、本質がヴァータタイプの人の場合、朝のヴァータ(2~6時)と昼のヴァータ(14~18時)の時間帯はバランスを崩しやすい(ヴァータが増えやすい)傾向にあります。

その為、食事や生活習慣でバランスをとることを意識したいですね。

アーユルヴェーダの食事

時間帯 支配しているドーシャ 受ける影響
2~6時 朝のヴァータ 風と空の影響を受けてソワソワと気持ちが落ち着かなくなり、眠りが浅くなることで目覚めます。
6~10時 朝のカパ 地と水の影響を受けて体が重く眠気が取れにくい時間帯です。気分が憂鬱になりがちで、食欲もあまり出ません。
10~14時 昼のピッタ 新陳代謝が高まる時間帯です。火と水の影響を受けてイライラしがちになります。行動が活発になり、頭が冴える時間帯です。
14~18時 昼のヴァータ 風の影響を受けて活動的になる時間帯です。風と空の不規則な性質により、発作的な行動やまとまりのない思考に翻弄されることも。
18~22時 夜のカパ 地と水の影響を受けて、徐々にペースダウンして眠りへの準備に入ります。
22~朝の2時 夜のピッタ 火と水の影響を受けて、代謝と変換が行われます。成長ホルモンが活発になり、熟睡している間に美肌が作られます。

時間帯別バランスのとり方

朝のカパの時間(6~10時)

緩慢なエネルギーの影響を受けて眠気がとれにくい傾向にあります。6時前のヴァータの時間なら、軽快なエネルギーの影響を受けて起床しやすいです。

カパの重だるさは、軽い運動をすると気分がスッキリします。消化力が落ちる時間帯なので、朝食は軽めにとることがおすすめです。

昼のピッタの時間(10~14時)

頭が冴えるので、頭を使う仕事に向いている時間帯です。消化力が高まるので、この時間帯に昼食をとりましょう。ボリュームのある食事でも大丈夫です。

昼のヴァータの時間(14~18時)

感覚が鋭くなり、活動的に過ごすことができる時間帯ですが、疲れも出てくる頃です。3時のお茶の時間で、少し休憩するのもおすすめです。

夜のカパの時間(18~22時)

就寝に向けてテレビなどは避け、静かにゆったりと過ごすのがおすすめです。消化力が落ちるので、夕食は軽めにします。22時までに眠ると良いとされています。

夜のピッタの時間(22~朝の2時)

この時間帯に眠れば質の良い眠りが得られます。就寝前にパソコンやスマートフォンで目と頭を使うと、ピッタの影響を受けて寝つきが悪くなります。

アーユルヴェーダについてのまとめとその起源について

今日は、前回までにお話しさせていただいたアーユルヴェーダについての補足を書きたいと思います。

今まで書いた内容と重複するかもしれませんが、理解を深めるために私の備忘録として書いています。

アーユルヴェーダについてのまとめ

アーユルヴェーダでは、自然界に存在するすべてのものに地、水、火、風、空の5つのエネルギーが働いていると考えます。

この5つの自然エネルギーのうち、地と水の組み合わせがカパ、火と水の組み合わせがピッタ、風と空の組み合わせがヴァータを作り出します。

アーユルヴェーダの五元素について

私たちの体も5つの自然エネルギーから影響を受けて生きています。

私たちの体は、大きく分けて3つの体質(ヴァータ、ピッタ、カパ)に分かれます。これをトリドーシャと呼びます。

アーユルヴェーダとは?

ドーシャとは、「増えやすい」という意味です。

アーユルヴェーダでは、生まれつきの本質(プラクリティ)は変わらないとされますが、私たちの体は、5つの自然エネルギーに影響を受けて、ドーシャのバランスは変化します。

ヴァータ、ピッタ、カパのうち、どのドーシャが増えやすいかということがその人の持って生まれた本質(プラクリティ)となります。

プラクリティとヴィクリティ

5つの自然エネルギーは常に変化しています。季節を例にとっても、春、夏、秋、冬と一年を通して常に変化しています。その影響を受けて、私たちのドーシャのバランスも常に変化しています。

例えば、ヴァータ体質の人は、バランスを崩すと、ヴァータが増える傾向にあります。その場合は、ヴァータを静める食事や生活習慣(運動や日常の過ごし方など)を行うことが大切です。

アーユルヴェーダの食事

アーユルヴェーダとヨガ

アーユルヴェーダでは、その人のもつ本質や年齢にあった生活を送ることが大切だと考えます。

アーユルヴェーダのいう本質「プラクリティ」とは、生まれ持った性質や体質、本来のその人の状態です。

アーユルヴェーダの起源

アーユルヴェーダは、現存する伝統医学の中では最も古いといわれています。今から5,000年前に、古代インドの聖者であるリシたちによって、病気に苦しむ人たちに啓示されたのが始まりと言われています。

アーユルヴェーダは、紀元前1,000年頃から紀元前500年頃に編纂されたと言われる、ヴェーダ文献(古代インドの宗教「バラモン教」の聖典)に体系立てて記録されています。

ヴェーダのサンヒター(本集)には、「リグ・ヴェーダ」、「サーマ・ヴェーダ」、「ヤジュル・ヴェーダ」、「アタルヴァ・ヴェーダ」の4つのヴェーダがあります。

アーユルヴェーダは、その4つの文献の中から、生命に関する知識を集大成したものです。

その後、アーユルヴェーダは、チベット、ペルシャ、中国、タイ、インドネシアなどのアジア諸国に伝わりました。

タイ古式マッサージは、アーユルヴェーダの名医であったとされるお釈迦様の主治医がインドからタイに広めたともいわれています。

インドネシア発祥の伝統医薬品であるジャムゥも、アーユルヴェーダの影響を受けたと言われています。

古代中国の白内障の手術は、インドからその手法が伝えられたともいわれています。

日本とアーユルヴェーダ

日本にアーユルヴェーダが伝わったのは、紀元前6世紀の仏教伝来の頃ですが、その頃は漢方医学などが中心だったため、アーユルヴェーダはあまり普及しませんでした。

江戸時代には、日本の南方諸島で、インドから伝わったオイルマッサージが行われていたそうです。

アーユルヴェーダの認知度が上がったのは、1970年代に入ってからです。丸山博大阪大学医学部衛生学教授らがインドを訪れ、アーユルヴェーダのすばらしさに感銘をうけ、日本で「アーユルヴェーダ研究会」を設立したのがきっかけです。

アーユルヴェーダの五元素について

アーユルヴェーダでは、すべてが5つのエネルギー(地、水、火、風、空)でできていると考えます。この5つを『五元素』と言います。

五元素は、自然界に存在するだけではなく、私たちの体も、五元素の影響を受けて生きています。

アーユルヴェーダでは、この5つのエネルギーの変化に合わせて体調を整えていく方法を教えてくれます。

五元素の特徴

五元素それぞれの特徴について簡単にご説明しますね。

地のエネルギー

地のエネルギーは、私たちのベースになるエネルギーです。私たちの体の骨格や筋肉に影響を与えています。心身ともに落ち着いて、安定して、穏やかな人は地のエネルギーに満ちています。

地のエネルギーが多い人は、愛と思いやり、慈しみに満ち、忍耐力があります。

地のエネルギーが増えすぎると、頑固になったり、身体が重く、動きが悪くなったり、引っ込み思案になったり、引きこもることがあります。

運動不足は、地のエネルギーを増やしてしまいます。

地のエネルギーが不足すると、落ち着かない、自己中心的になってしまう、といった症状が出ることがあります。

地のエネルギーが不足していると感じたときは、自然の中に出かけて土に触れたり、土の中で育つ根菜類の野菜を食べると良いでしょう。

水のエネルギー

水のエネルギーは、私たちの体内に流れる体液や血液などに影響を与えています。物事にあまりこだわらず、水に流していける順応性を持つ人は水のエネルギーに満ちています。

相手を敬い、協調性を重んじる、平和主義の人です。

水のエネルギーが増えすぎると、気持ちがどんよりと重く沈んだり、誰かに頼りすぎてしまったりする傾向があります。

水のエネルギーが不足すると、疑い深くなったり、頑固になります。

水のエネルギーが不足していると感じたときは、水分を多く含んだみずみずしい野菜や果物を食べるようにしましょう。

火のエネルギー

火のエネルギーは、私たちの体の体温や消化、酵素など、分泌や代謝の機能に影響を与えています。情熱的で、積極性があり、野心家で、達成願望があり、正義や道徳を重んる人は火のエネルギーに満ちた人です。

曲がったことが嫌いで、善悪の判断がはっきりしています。

火のエネルギーが増えすぎると、嫉妬しやすくなってしまう傾向があります。

火のエネルギーが不足すると、やる気がなくなったり、すぐにあきらめてしまうことがあります。

火のエネルギーが不足していると感じたときは、太陽の光を浴びたり、暖かい場所に出かけたり、温かいものを食べましょう。

風のエネルギー

風のエネルギーは、私たちの呼吸を司ります。いろんなことに興味を示し、発想や想像力が豊かで、真理を追究したいと貪欲になる人は風のエネルギーに満ちています。

直感が鋭く、人と交流するのが好きな人です。

風のエネルギーが増えすぎると、じっとしていられなくなり、考えや話があちこちに飛んだり、興味の対象が多すぎて、ひとつに集中できないなどが起こります。

風のエネルギーが不足すると、気分の落ち込みや、頭が固くなり、新しい意見を受け入れられなくなることがあります。

風のエネルギーが不足していると感じたときは、外に出かけて風を感じたり、乾燥した食べ物や葉野菜などを食べてみましょう。

空のエネルギー

空(くう)のエネルギーは、私たちの体の鼻腔、口腔、胸腔など、空間(スペース)のある部分に影響を与えています。

空は、これから何かが入る空いた空間です。あらゆることが起こる可能性を表します。

落ち着いていて、あくせくせず、見返りを求めず、心にゆとりがある人は空のエネルギーに満ちています。

空はバランスがとれた状態です。

五元素とドーシャの関係

5つのエネルギーは、互いに影響を与え合い、アーユルヴェーダの3つのドーシャ(性質)となります。

ヴァータ 空、風 動かすエネルギーを支配しています。
ピッタ 火、水 熱いエネルギーを支配しています。水は火の調節の役割があります。
カパ 地、水 落ち着いたエネルギーです。水と結びつくことで地がより固まります。

 

参考までに以前書いたドーシャについての記事です。

アーユルヴェーダとは?

 

サットヴァ・タマス・ラジャスとは

今日は、サットヴァ・タマス・ラジャスとは何かについて説明します。インドには様々な哲学の流派が存在しますが、その中で、サーンキヤ哲学においては、この世界はプルシャとプラクリティによって成り立っているという考えがあります。

以前、プラクリティについて少し書いたことがあります。

プラクリティとヴィクリティ

プルシャとプラクリティ

プルシャとは、真我のことを指し、何があっても不変の存在とされています。プラクリティとはプルシャ以外の物事で、常に変化するものです。

人間を例にとってみましょう、私たちの心の中には、常に冷静に外の世界を「眺めている意識」が存在します。ヨーガスートラ(ヨガの教典)では、プルシャのことを「変化を観る存在」と言っています。

心身(体質を含め)はプラクリティです。プラクリティは変化します。悲しくなったり、またある時は嬉しかったり、髪が伸びたり、お腹が痛くなったり、疲れて眠くなったりしますね。でも、そんな変化する自分の心身の状態を、心の中で常に変わらず見つめているもう一人の自分がいます。それがプルシャです。

トリグナとは

グナは、サンスクリット語で性質という意味を持ちます。グナは、プラクリティを構成する要素です。グナにはサットヴァ・タマス・ラジャスという3つの性質があります。これをトリグナと言います。

サットヴァ(純質)

純粋、調和を意味します。穏やかで平和なバランスが取れている状態です。創造的で向上心に満ち、進化、前進、進歩へと向かうエネルギーです。サットヴァは、本能的に自然と調和し、バランスを回復する方向へと私たちを導いてくれます。

タマス(暗質)

惰性、無知を意味します。やる気がなくバイタリティーに欠ける状態です。現状維持を好み、行動や変化を嫌います。無難な方法を選び、波風を立てないようにしようとします。エネルギーの停滞を招きやすいです。サットヴァとは正反対の意味を持ちます。

ラジャス(激質)

激動、動性を意味します。心はいつも揺れ動き、性格は短気で、衝動的な傾向があります。ラジャスは、進化したいというサットヴァと、今のままでいたいというタマスとの間で揺れ動き、自分にとって利益になる行動をしようとします。

サットヴァを増やそう

サットヴァを増やしていくと、自然と調和し、健康で幸せな人生を生きていくことが出来ます。日々の生活の中で、心にアーマ(毒素)が溜まってきても、サットヴァが自然とそれらを回復しようという力が働くからです。

サットヴァを増やすには、日々の生活の中で、質の良い食事や水をとり、十分な睡眠をとることが大切です。心を明るく保つには、十分な休息をとりましょう。そして、できるだけ自然の中で過ごすようにしてください。

周囲の人に対して、寛大に、やさしさや思いやりの気持ちを持って接し、相手の良い面を見るようにしましょう。贈り物をしたり、ほめてあげたり相手の喜ぶことをしましょう。

朝は日の出とともに起床し、日没を眺めて過ごし、満月の夜には月明かりの下を散歩すると良いそうです。

カパを静める食事

カパ体質の人の食事法

カパの特徴は、(冷たさと湿気)ですので、その反対の(温かくて乾燥した)食べ物を食べるようにします。具体的には、バターや油などの油分はなるべく控え、水分を控えた調理法で調理します。砂糖もなるべく控えます。

参考までに

アーユルヴェーダの食事

カパ体質の方は、甘味や塩味には気をつける必要があります。塩分を摂りすぎると、カパ体質の人は、体に水分がたまりむくみやすくなってしまいます。

調理には油分を控えた軽めの食事を多めにします。辛味はカパ体質の人の消化を促し、体を温めます。苦味や渋味は、つい食べ過ぎてしまうカパ体質の人の食欲を抑制するのに役立ちます。

食事はなるべく温かい、熱を加えて乾燥させた料理(焼く、炒める、あぶる)にしましょう。同じ温かい調理法でも、(蒸す、煮る、茹でる)という湿気のある調理法は、カパ体質の人にはあまり向いていません。

食前にレタスなどの渋味のあるものを摂ると良いでしょう。食べすぎを予防してくれます。食事にスパイスなどの苦味を加えるのはカパ体質の人におすすめです。

カパ体質の人にとって辛い料理は体に良い食べ物です。熱くて辛い食べ物は、特に冬にカパ体質の人にとっておすすめです。カパの冷たさや湿気を静めてくれます。

カパ体質の人にとって辛くて軽いもの(油分や水分の少ないもの)はすべて良いもので、逆に冷たく、重い、甘いものはすべて良くありません。

冷たいジュースやミルク、甘いケーキは、特に冬などは鼻をつまらせます。ベーコンやソーセージは塩分が多く含まれており、油で調理するのでカパのバランスを崩してしまいます。

鼻詰まりや鼻水、寝起きの悪さなどはカパが過剰になっている兆候です。このようなときは、ハチミツやお湯、レモンジュース、ショウガ(ジンジャーティー)がおすすめです。

カパ体質の人はハチミツを、1日にスプーン1杯以上は摂らないでください。ハチミツはアーユルヴェーダ的には熱を加えた調理は健康にとって良くありません。

カパ体質の人にとってバター、アイスクリーム、チーズなどの乳製品はあまり良くありません。体を冷やしてしまいます。摂るならば低脂肪ミルクに変えます。

生の果物や野菜のサラダは、繊維質と渋味がカパ体質の人にとって良く働きます。油分のあるドレッシングは少量にしましょう。

揚げ物やファーストフードは油分、塩分、甘味が多くカパには不向きなのでなるべく控えましょう。

カパチュールナはカパを静める即効性のあるスパイス・ミックスです。アマゾンなどのネット通販で手に入ります。

カパを静める食べ物

下記のものはカパにおすすめの食材です。

辛味 苦味 渋味
軽さ 乾性 熱さ

アスパラガス
ブロッコリー
キャベツ
にんじん
カリフラワー
セロリ
なす
にんにく
緑の葉野菜
レタス
きのこ
オクラ
たまねぎ
えんどう
唐辛子
じゃがいも
もやし

りんご
あんず
洋梨
ドライフルーツ全般

大麦
そば
コーン
ライ麦

鶏肉
えび

インゲン豆と豆腐以外の豆製品

コーン油
べにばな油
ひまわり油

加熱していないハチミツ

かぼちゃの種
ヒマワリの種

カパを増やす食べ物

下記のものはカパのバランスを崩すので、なるべく控えましょう。

甘味 酸味 塩味
重さ 油性 冷たさ

さつまいも

トマト
ズッキーニ
甘く水分の多い野菜

アボカド
バナナ
ココナッツ
マンゴー
メロン
オレンジ
パパイヤ

パイナップル
甘味、酸味、果汁が多い果物

オーツ麦

小麦

無脂肪・低脂肪以外の乳製品

赤身の肉と魚介類

加熱していないハチミツ以外の甘味

かぼちゃ・ひまわり以外のナッツ類

 

ピッタを静める食事

ピッタ体質の人の食事法

ピッタの特徴は、(熱)ですので、その反対の冷たいもや、あまり熱くない食べ物が適しています。

ピッタドーシャにおすすめの食事は、冷たいもの、あまり熱くないもの、多少ザラザラした食感で、苦味、甘味、渋味があるものです。油分は少し控えたほうが良いでしょう。

過去の記事です。参考までに。

アーユルヴェーダの食事

ピッタ体質の人は、塩分をとりすぎたり、酸味や辛味の強い料理はドーシャのバランスを乱すので、なるべく控えましょう。

ピッタ体質の人は、夏は冷たくさっぱりとした食事をとるのが良いでしょう。反対に塩や油、スパイスなどは体を熱くしてしまうので控えましょう。

ピッタが過剰になると体は酸性に傾きますので、酸性食品は控えましょう。しかし、例外はレモンジュースです。サラダのドレッシングを作るときに少量使っても良いでしょう。

酸性食品の例
ピクルス、ヨーグルト、サワークリーム、チーズ、発酵食品、アルコール飲料、コーヒーの酸味など

ドーナツなどの油分の多い食べ物や揚げ物は、ピッタの体のバランスを崩します。赤身の肉の脂肪は体を熱くするので避けましょう。

ピッタは他のどの体質の人よりも菜食が適しています。できるだけ、ミルク、穀物、野菜の多い食事を心がけましょう。

ファーストフードや加工食品は塩味と酸味が多く含まれていますので避けましょう。外食するときは、脂肪(油分)や肉(熱)の少ない食事を選びます。

水を飲むときは氷は入れないようにしましょう。熱いスープを飲むよりは、サラダを食べましょう。

ピッタチュールナはピッタを静める即効性のあるスパイス・ミックスです。アマゾンなどのネット通販で手に入ります。

ピッタを静める食べ物

下記のものはピッタにおすすめの食材です。

甘味・苦味・渋味
冷たさ・重さ・乾性

アスパラガス
ブロッコリー
芽キャベツ
キャベツ
カリフラワー
セロリ
緑の葉野菜
レタス
きのこ
オクラ
えんどう
じゃがいも
もやし
ピーマン
さつまいも
ズッキーニ

リンゴ
アボカド
さくらんぼ
いちじく
ぶどう
マンゴー
メロン
オレンジ
洋梨
レーズン

小麦
白米

バター
ミルク
アイスクリーム

鶏肉
エビ

ひよこ豆
豆腐などの大豆製品

オリーブオイル
ひまわり油

ハチミツと糖蜜以外の甘味料

ココナッツ
かぼちゃの種
ひまわりの種

甘味、苦味、渋味を持つスパイスは少量ならとってよい

カルダモン
コリアンダーシード
シナモン
パクチー
ディル
フェンネル
ミント
サフラン
ターメリック

ピッタを増やす食べ物

下記のものはピッタのバランスを崩すので、なるべく控えましょう。

辛味・酸味・塩味
熱さ・軽さ・油性

にんにく
唐辛子
たまねぎ
トマト

酸っぱかったり、熟していない果物は避ける

グレープフルーツ
レモン

玄米

チーズ
ヨーグルト

赤身の肉と魚介類全般

レンズ豆

ごま油
べにばな油
コーン油

ココナッツ、かぼちゃの種、ひまわりの種以外のナッツ類

バーベキューソース
酸っぱいサラダドレッシング
ケチャップ
マスタード

マイラ・リューインさんについて

マイラ・リューイン(Myra Lewin)さんは、日本ではあまりなじみのない『アーユルヴェーダ』についての専門家であり、プラクティショナー(実践者)です。

マイラ・リューインさんは、ヨガとアーユルヴェーダの第一人者として有名なかたです。

マイラ・リューインさんのバイオグラフィー

若いころは、大企業で働いていて、勝ち組の人生を歩んでいたマイラ・リューインさんでしたが、なぜか心は満たされず、自分の人生に満足できませんでした。

30歳の時に、リウマチ関節炎で医者に『治癒不能』と告げられました。

その後、会社を退職し、ヨガと瞑想に取り組むようになり人生が変化し始めました。

インドでヨガの修行をしていた時に、アーユルヴェーダに出会い、リウマチ関節炎を克服することができました。

インドや世界各国のアーユルヴェーダとヨガのトレーニングを受け、30年以上たった今では不調知らずの体を手にしています。

全米アーユルヴェーダ医師会(NAMA 正式名は National Ayurvedic Medical Association)より認定された、PACE(アーユルヴェーダ継続的専門教育)プロバイダー。10,000時間を超える圧倒的な指導実績で、ヨガアライアンス認定RYT500に登録された、プロのアーユルヴェーダ・ヨガ・インストラクターです。

1980年よりヨガやアーユルヴェーダ、栄養学、瞑想、エネルギーマネージメントなどについて学び、30年以上の指導と臨床経験を持ちます。

ニュージーランドを拠点とする、ヨガアライアンスの認定スタジオ『Hale Pureアーユルヴェーダ&ヨガ』の創始者であり、世界各国で、ヨガやアーユルヴェーダのインストラクターの育成はもちろん、カウンセリング、瞑想、リトリート、ワークショップなどを開催しています。

ハワイのカウアイ島には、マイラ・リューインさんの自宅兼スタジオがあり、自宅の周囲は広大な有機農法にこだわったオーガニックファームがあります。

ヨガやアーユルヴェーダ以外にも、ハーブに関する知識も深く、クライアントの状態に合わせてアロマオイルを調合するそうです。

また、アーユルヴェーダに基づく創作料理なども行います。日本で翻訳されている著書は以下の通りです。

『アーユルヴェーダの簡単お料理レシピ』
『もっと自由に アーユルヴェーダ流食べ方暮らし方』

マイラ・リューインさんについての感想

マイラ・リューインさんは、人生の初期の頃も他人から見て、成功した人生を歩んでいました。でも本当の自分の望みに気づかず、本来の自分の望む方向とは違う方向に進んでいたのもあってか、リウマチ関節炎という病気に悩まされていました。

ヨガやアーユルヴェーダに出会って満たされた人生を歩んでいる今でも、すべてが自分の思い通りに行くわけではないそうです。

エゴを極力取り除いて流れにのっていれば必要なものは自然に訪れてきます。私たちは欲しいものや叶えたいことに対してどうしても執着しがちですね。だけどそれはすぐに手に入れられるとは限らない。

思い通りにならなくても「自分に必要ではなかった」と執着を手放すことができれば、最終的には自分が思っていた以上のものが得られます。

マインドに支配されるのではなく、自分でコントロールできる。ヨガとアーユルヴェーダを実践するとそれがわかるので、生きるのがとても楽になります。

マイラ・リューインさんインタビューより

今の自分の現状を焦って自分でコントロールしようとするのではなく、執着を手放して、流れにゆだねるということが大切なんだなと気づきました。

執着を手放して、流れにゆだねるには、自分を深く信頼することが必要です。上手くいかないことに一喜一憂するのはやめて、安心して流れにまかせましょう。

ハワイのカウアイ島の素晴らしい景色を見ていると、マイラ・リューインさんのマインドを現地で直接学んでみたいと感じました。

 

ヴァータを静める食事

ヴァータ体質の人の食事法

ヴァータの特徴は、(冷たさと乾き)ですので、その反対の(熱さと油分を含んだ)食べ物を食べるようにします。

ヴァータドーシャにおすすめの食事は、冬の季節に食べるような、温かくて水分が多く、栄養たっぷりの食事です。

過去記事を参照してください。

アーユルヴェーダの食事

具だくさんシチューやスープ、煮込み料理、ミルク、バターを使ったこってりした食べ物、焼きたてのパン、温かいご飯や小麦のお粥などの調理された穀物、ビーフステーキなどがおすすめです。

野菜を食べるときは、加熱して食べましょう。少量の油で調理するものが良いでしょう。

デザートを食べるときは、冷たくないものを選びます。

夕方になるとスタミナ不足になりがちなヴァータ体質の人には、夕方におやつをつまむのも良いでしょう。甘いクッキーをハーブティーと一緒に頂きます。

スナック類を食べるより、塩味のあるナッツ類、とくにアーモンドがおすすめです。でもナッツ類は消化しにくいので、食べすぎに注意しましょう。

温かいミルクはヴァータ体質の人に適しています。少量の砂糖かハチミツを加えるのも良いです。

甘い果物は、ヴァータ体質の人におすすめです。特にマスカットとマンゴーがヴァータ体質の人に良い効果をもたらします。リンゴなどの、やや渋味のある果物は食前に食べましょう。

ショウガはヴァータ体質の消化を良くしてくれます。シナモン、フェンネル、カルダモンなどのスパイスはヴァータ体質におすすめです。食欲不振を回復するのに役立ちます。

ヴァータチュールナは、ヴァータを静める即効性のあるスパイス・ミックスです。アマゾンなどのネット通販で手に入ります。

キャベツやブロッコリー、サラダなどヴァータを増やす料理などに振りかけて食べたり、調味料として使います。

ヴァータ体質の人は消化が不安定なので、柔らかく、消化の良い食べ物が向いています。

食事をする環境にも敏感なので、落ち着いてリラックスできる場所で食事をとるようにしましょう。

ヴァータを静める食べ物

下記のものはヴァータにおすすめの食材です。

甘味・酸味・塩味
重さ・油性・熱さ

アスパラガス
にんじん
きゅうり
いんげん
オクラ
玉ねぎ(加熱したもの)
にんにく(加熱したもの)
さつまいも
かぶ
アボカド

バナナ(青くないもの)
さくらんぼ
ココナッツ
いちじく
ぶどう
マンゴー
メロン
オレンジ

パイナップル
加熱調理した果物
甘く良く熟した果物


小麦

乳製品

鶏肉
魚介類

ひよこ豆
緑豆
豆腐

甘味料

油全般(特にごま油)

少量のナッツ類(特にアーモンド)

オールスパイス
バジル
ローリエ
黒コショウ
カルダモン
パクチー
シナモン
クローブ
クミン
フェンネル
しょうが
ナツメグ
オレガノ
セージ
タイム

ヴァータを増やす食べ物

下記のものはヴァータのバランスを崩すので、なるべく控えましょう。

辛味・苦味・渋味
軽さ・乾性・冷たさ

冷たいものや乾燥したもの、熟していないものは避けます。

ブロッコリー
キャベツ
カリフラワー
セロリ
ほうれん草
きのこ
唐辛子
じゃがいも
もやし
ズッキーニ
(上記の野菜は調理すれば食べてもOK)

リンゴ
洋ナシ
(上記の果物は調理すれば食べてもOK)
ドライフルーツ
熟していない果実

大麦
そば
とうもろこし
きび
ライ麦

赤身の肉

コリアンダーシード
パセリ
サフラン
ターメリック